正月

正月飾り

正月にはどの家にもその年の神様、歳神(としがみ)様が降りてくると考えられていました。五穀豊穣(ごこくほうじょう)を約束してくれる歳神様は、農耕民族である日本人にはもっとも大切な神様です。正月飾りは歳神様を迎え、祀るために整えます。
正月飾りの飾りつけは二十七日くらいから始めるのが一般的ですが、二十九日と三十一日を避けるのがしきたりです。二十九日は九が「苦」に通じるところから、「苦待つ」などといって嫌われます。三十一日に飾ると「一夜飾り」になって不吉だ、ともいいますから、できればやめたほうがよいでしょう。
正月飾りの形や飾り方は地方によって異なりますが、新たな気分で新年を迎えるためにも、自分の家に合ったお飾りを整えたいものです。

門松

門松は歳神様の依代(よりしろ)です。天から降りてきた歳神様のよりどころと考えられていましたから、昔は木を採ってくる時期や作法に詳しい決まりがあったものです。現在では竹を使うのが一般的ですが、地方によっては他の常緑樹を用いることがあります。門松は遅くても二十八日までに立てましょう。
本格的な門松は、三本の竹に松と梅をあしらい、根元をむしろで巻いて荒縄でしばったもので、植木屋に注文します。

しめ飾り

しめ縄にうらじろや松などの縁起物をあしらったのがしめ飾りです。
しめ縄は神聖な場所を示す印です。正月にはしめ飾りや輪飾りを飾って古い年の不浄を断ち、家を祓い清めます。すす祓いが終わったら神棚にも新しいしめ縄をはりましょう。片方が細くなる大根じめやごぼうじめを使うときは、太い端が向かって右側にくるように飾ります。
ゆずり葉は家の永続を、うらじろは長命を、だいだいは家の繁栄を表すなどといわれています。しめ飾りは玄関の正面か、アパートやマンションなら戸口に下げます。
しめ飾りを小さく簡単にした輪飾りは裏口やかまどなどに飾ります。もとは家の中の水や火などそれぞれの神様のいるところにかけたものですが、現在では一種の縁起物として、自分が大切と思うところに飾り、今年一年の活躍を祈ります。

正月飾りの後始末

昔は小正月の火祭り(どんど焼き、左義長(さぎちょう))で村の正月飾りを集めて燃やし、歳神様を天に送ったものです。
門松などの正月飾りを外す日は、四、六、七日、あるいは十五日など地方によりさまざまです。現在、東京近辺では六日の夕方に外します。翌日に焼き、一般のごみといっしょに出します。ただ、他のごみとは別の紙に包んで出すようにしましょう。外すまでの期間が「松の内」です。

餅つき

餅は歳神様に供える供物で、かつてはきわめて貴重な食品でした。神の供物をあとで家族で食べ、豊かな生命力や一家の幸せを祈ったのが正月のお餅の由来です。
餅つきも二十八日までに済ませましょう。とくに二十九日の餅つきは「苦をつく」「クンチモチ」などといって嫌われます。現在では米屋か和菓子店に注文するのが一般的です。

鏡餅

鏡餅は歳神様への供え物で、一重ね(大小二個)の丸餅にゆずり葉、うらじろ、だいだいをあしらいます。伊勢えびや干し柿、扇の飾り物、水引きなどを使うこともあります。飾るのは床の間です。三方に奉書紙か半紙を敷いて置きましょう。
床の間を本格的に飾る場合は、鶴亀や高砂などめでたい掛け軸をかけ、床の間中央に鏡餅、上手(向かって右側)に屠蘇(とそ)器、下手に正月らしい生け花を置くようにします。床の間がない場合は、飾り棚や小さなテーブルなどを利用して正月らしい、あらたまった感じが出るように工夫すればよいのです。
鏡餅は、十一日前後に行う鏡開きの日に、おしるこなどにして食べます。 

おせち料理

おせち料理の「せち」はもともと「節供(せっく)」からきたことばで、本来は正月ばかりではなく、すべての節供のときに神様に供える料理を「御節料理(おせち)」と呼びました。今では正月料理をさすことばになっています。四つの重箱に春夏秋冬をかたどって詰めるのは江戸時代に起こった風習です。
重箱の詰め方や入れるものは地方や家により伝統があるものです。四段重ね(四の字を嫌い、一の重、二の重……与の重という)が正式ですが、二、三段を用いるのが一般的です。
一の重は口取りといって、紅白かまぼこ、きんとん、伊達巻きなど、二の重は焼き物、鉢肴といって、鯛の塩焼き、魚、貝類を、三の重には煮物、野菜やこんにゃくなどの煮しめを、与の重には、数の子、黒豆、紅白のなます、昆布巻きなどのお祝い肴や酢の物を入れるというのが一般的です。
最近では洋風や中華風など創意工夫されたおせちが多くなっています。
お重の詰め方は、関東でぎっしりとすき間なく入れるのに対し、関西では南天の葉などを敷いて料理を少なめに入れる傾向があります。
年始のひとときを、ホテルや結婚式場、料亭などの特製おせちで楽しむ方々も多いようです。

雑煮

正月に食べる餅を入れたお椀のこと。家ごとで味が違うといわれ、地方によってもさまざまな伝統があります。たとえば関東以北では切り餅をすまし汁仕立てで、関西以西では丸餅をみそ仕立てで食べるのが一般的です。

屠蘇

正月元旦から三日間に限って飲まれるめでたい酒。サンショウ、キキョウなどの薬草を調合して、酒やみりんにひたしたものです。屠蘇器というきゅうす型の銚子を三つ重ねて杯でいただきます。長寿を祈って、年少者から飲み始めるのがしきたりです

初詣

神社の氏神様に参ること。除夜の鐘が鳴り終わるのを待って初詣をする人もいますが、元旦から三日間くらいでもかまいません。

元旦

元旦とは元日の朝のことです。元旦に年始の挨拶をかわすのは身内が中心です。

年始回り

年始回りは二日から七日(松の内)にします。自宅の訪問はなるべく仕事が休みの間に済ませましょう。時間は午後一時過ぎにし、夕方や食事時は避けます。
年始の挨拶は玄関前で失礼するのが原則です。コート類は呼び鈴を鳴らす前に脱いでおくのがマナーです。子どもは連れていかないほうが無難でしょう。

年賀の品

お歳暮を送っている場合は不要です。手ぶらで行きたくない場合は、菓子折りなどを持参しましょう。
お歳暮を贈っていなければ、やや改まった品をもっていきます。高級菓子や酒類、地方の特産物など、年始客の接待に使えるものか、日持ちのする食料品が無難です。
のし紙には「御年賀」と書きます。年賀の品を年頭の挨拶のすぐあとで差し出します。

お年玉

お年玉とは本来、歳神様に供えた餅を下げて、神様からのたまわり物としていただいた「身祝い」のことでした。それが現在では、子どもたちに贈るお金をさすようになってしまいました。また目上であっても隠居した親などのお年寄りにも正月のプレゼントとして差し上げます。
お年玉はぽち袋という小さなのし紙に入れて渡します。なければ懐紙かティッシュペーパーに包みます。むきだしはいけません。
現金のお年玉は小学生から高校生までで十分です。幼児には絵本やお菓子などが適当でしょう。

年賀状

直接、家へ年頭の挨拶に出向けない相手には年賀状を出します。年賀状だけのお付き合いなどといいますが、心をこめた一枚のはがきはうれしいものです。
元旦に届くように出すのにこしたことはありませんが、松の内に届けば十分です。
年賀状は自筆で書くのが正式です。印刷を利用した場合は、ひと言書き添えるようにしましょう。
喪中の人に出してしまったら、あとでおわびの手紙を出すようにしましょう。
年賀状を出しそびれた場合は、寒中見舞いの形で見舞状を出すといいでしょう。

書初め

習い事や仕事にとりかかるのを「○○初め」「○○始め」といいます。これは上達や発展を祈願する、日本の伝統です。
デパートなどでの初売りや初荷などもこうした風習のなごりです。官庁では一月四日に御用始めを行います。

七草がゆ

一月七日の朝、七種の草の若葉を炊き込んだ七草がゆを食べる行事です。せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな(かぶ)、すずしろ(大根)の「春の七草」を入れるのが正式です。現在では、小松菜、三つ葉、ほうれん草などで代用することがほとんどです。

鏡開き

一月十一日に、鏡餅を下げ、しるこや雑煮にして餅を食べます。固くなった餅は刃物で切らずに、槌などで叩き割るのがしきたりです。

小正月

一月十五日を元日からの「大正月」に対して「小正月」と呼びます。陰暦のなごりと言われています。
「どんど焼き」とか「さいと」「左義長」などという小正月の火祭りを行うのが全国的な風習です。

大寒と寒中見舞い

「大寒」は二十四節気のひとつで、一月二十日ごろから立春までの三十日間を「寒の内」といい、寒げいこや寒中水泳、寒まいりや裸まいりなどの耐寒行事が行われます。
正月行事も一段落したころに、身近な人に寒中見舞いをするのもよいでしょう。ひとり暮らしの老人などに、「お元気ですか」と声をかけるのもいいですし、喪中だった人のお宅へ手みやげをもって訪問するのもよいでしょう。