危篤・臨終を迎えたら

●危篤の連絡方法

 人間の一生でもっとも大きな悲しみは、肉親の死に接するときでしょう。医師から危篤の通告を受けたときのショックは、筆舌に尽くしがたいものです。
 しかし、遺族は悲しみに沈んでばかりはいられません。息のあるうちに、最後のお別れの必要な人に連絡しなければなりません。
 危篤を連絡する範囲は以下の通りです。
①家族
②三親等までの近親者
③親しい友人・知人

 これはあくまでも目安です。三親等までの近親者であっても、ふだん疎遠であれば危篤の連絡は必要ないでしょう。むしろ友人など、危篤の方がほんとうに会いたがっている人たちを中心に考えるべきです。
 通知を受けたほうは、とるものもとりあえずかけつけなければなりませんから、あまり親しくない人たちにまで知らせては、相手の迷惑になるばかりか、大切な人たちが別れを惜しむ時間もなくなってしまいます。
 連絡は、電話が確実です。相手が目上の人でも、失礼にはなりません。早朝や深夜だったら、「朝早くからお騒がせいたしますが」「夜分おそれいります」とおわびをひと言述べてから、こちらの名前と危篤であることを告げます。
 「私は○○の家内ですが、○○が危篤ですので、ぜひひと目会ってやっていただけますか」というように伝え、どこに、いつごろまで来てもらいたいか、要点をしぼって伝えます。必要事項を書き出しておくとよいでしょう。

●末期の水の作法

 医師から臨終の宣告があると、居合わせた人は病人に末期の水をふくませます。このしきたりは「死水(しにみず)」ともいわれます。生命に欠くことのできない水の霊力で、もう一度よみがえってもらいたいという願いをこめ、また死んでのちに水に渇くことのないようにとの気持ちが現れたしきたりです。
 以前は、死にゆく人にまだ意識のあるうちに行ったものですが、このごろは医師が死亡を確認してから行うようになりました。
 新しい筆か、割り箸の先にガーゼか脱脂綿を巻きつけたものと、水を満たした茶碗を用意します。これを、死に臨んでいる人の唇に軽くあてて、うるおしてあげます。
 末期の水をとる順序は、血縁の深い順で、配偶者、子(年齢順)、病人の両親、兄弟姉妹、子の配偶者(年齢順)、孫、といった順になります。
 臨終の席に小さな子どもを立ち会わせるかどうかで悩む場合も多いようです。とくに息をひきとろうとする人が、病気で苦しんでいる場合などはなおさらです。
 しかし、人間の死という厳粛な瞬間に立ち会うことで、生命の尊厳を身をもって知ることができます。とくに死にゆく人がその子の父や母である場合は、最後の別れを告げさせてあげたいものです。