キリスト教による葬儀

●プロテスタントの葬儀

 キリスト教では、葬儀、告別式を分けず、一般参列者も同席して同時に行います。これはカトリック、プロテスタントとも共通です。カトリックがどちらかというと儀式を重んじる傾向にあるのに対し、プロテスタントは全般に簡略化されているといえます。プロテスタントの葬儀で、最初の儀式は納棺式で、讃美歌を合唱し、聖書の朗読のあと納棺します。
 続いて「前夜祭」に移りますが、これは仏式の通夜にあたります。前夜祭では讃美歌合唱、聖書朗読、牧師の説教、祈祷(きとう)が中心です。その後、お茶と菓子程度で参列者が故人の思い出を語り合ったりします。
 葬儀は、カトリック、プロテスタントとも教会で行われます。当日、自宅で簡単な出棺の式があったあと、棺は教会に運ばれます。参列者が礼拝堂に入り、着席すると式が始まります。
 最初に牧師によって、「招きの言葉」が読まれることがあります。これは省略されることが多いようです。次に讃美歌合唱、聖書朗読、祈祷と続き、もう一度讃美歌が歌われます。この讃美歌は、故人の愛唱歌を選ぶことが多いようです。
 次に、故人の信仰の歩みや人柄などが紹介されます。これと前後して牧師の説教があり、聖書のことばが話されます。
 その後、讃美歌合唱、弔辞弔電の披露、祈祷、オルガンによる奏楽、喪主の挨拶があります。
 最後に、牧師を先頭に喪主以下が献花をします。これは必ずしもしなくてはいけないというものではないのですが、今日一般的に行われるようになりました。

●カトリックの葬儀

 カトリックではできるだけ故人の信仰に沿い、葬儀を行うという考え方で、原則として信者でないと教会での葬儀はできません。
 古くからの伝統を重んじるのがカトリックの葬儀の特色ですが、日本の教会では、地方のしきたりを取り入れ、遺族と神父が相談しながら葬儀の方法を決めています。
 納棺はふつう、通夜に先立って行い、続いて前夜祭に移ります。前夜祭は、プロテスタントの式とほぼ同じ内容です。翌日が葬儀です。
 出棺式を行ったあと、棺は礼拝堂に運ばれ、入堂します。神父は聖水を注ぎながら祈祷します。
 棺が安置されて一同が着席すると「ミサ聖祭」が始まります
 神父が祭壇に立ち、死者のために安息のミサをささげるのがミサ聖祭です。ミサは、キリストが人類を救うために十字架上で自からの生命をささげ、犠牲になったことを感謝する聖祭です。ミサのあと、神父が説教をし、その後「赦祷式(しゃとうしき)」に移ります。神父は棺に聖水をふりまき、香をたきながらその周りを回り、故人の永遠の安息を祈ります。ここで葬儀は終了し、神父は退場します。そしてここからは喪主が司会となって、告別に移ります。
 弔辞朗読、弔電紹介、喪主か遺族代表からの挨拶などがあり、喪主以下参列者は棺に聖水を注ぎます。聖水は、器の水に、木の枝をひたして棺の上に、中、左、右と三回かけます。
 告別は聖水が正式ですが、献花にすることもあります。
 そのあと、火葬場か墓地へ向かいます。キリスト教では土葬が本来なのですが、土葬を許される墓地はごく少ないので、近年は火葬が一般的です。火葬場での方法は仏式とほぼ変わりません。
 遺骨をかまどの前に安置する仏式の納めの式にあたる儀式では、聖水を注ぐ点が異なります。
 また、カトリックで特徴的なのは、七歳未満の幼児が死んだときは、これを葬儀として扱わない点です。これは幼児はまだ自ら罪を犯していない清い存在であるから、罪の許しを乞うまでもなく天国へ行けるという考えからきています。そのため、儀式は天国へ召されたことへの感謝をささげることになります。呼び方も、葬儀ではなく「感謝祭」といいます。