厄年・年祝い

●年祝いの意味

 一生のうちの特定の年齢を人生の節目として祝い、息災を祈るのが年祝いです。よく知られる長寿祝いのほか、体調や社会的な地位が変わりやすい年を慎重に過ごすようにという昔の人の知恵で選ばれたものもあります。三歳、五歳、七歳、十五歳(加冠の年)、男性の二十五歳と四十二歳、女性の十九歳と三十三歳などが代表的で、男女のこの年は厄年(やくどし)として知られています。
 年祝いにあたった人は、神社に参り、客を招いて食事をともにするのがならわしでした。最近では、ホテルや式場の会食プランを利用することも多いようです。

●厄年と厄除け

 厄年は時代や土地によって、さまざまに決められていました。現在でも信じる人が多いのは男性の二十五歳と四十二歳、女性の十九歳と三十三歳で、とくに四十二歳は「死に」、三十三歳は「さんざん」と語呂合わせされるところから大厄といわれています。大厄の前後を前厄、後厄とするのも全国的です。かつては、厄は役に通じるといって、大いに人生の折り目として祝ったものですが、近世以来、厄難ばかりが強調されるようになりました。
 厄除けと厄難のがれのまじないとしては、神社に参るほか、女性はうろこ模様の衣装をつくり、男性は厄祓いの宴を開きます。
 要は気持ちの問題です。厄をみんなに拾ってもらう厄落としの宴に招かれたら、なるべく出席しましょう。縁起ものや手みやげを持参する場合は紅白蝶結びの水引きを用い、表書きは「御祝」とします。土地の習慣を聞いておくと安心です。
 なお自分が厄年にあたった場合は、できれば第三者をまきこまずに過ごしたいものです。どこの神社でも厄祓いやお祓いをしてくれます。また先人の知恵に学んで徹底的な健康診断をするのもよいでしょう。

●長寿の祝いのいろいろ

 長寿祝いには、還暦(六十一歳)、古稀(七十歳)、喜寿(七十七歳)、傘寿(八十歳)、米寿(八十八歳)、卒寿九十歳)、白寿(九十九歳)があります。
 数え年で行うのがしきたりですが、満年齢でもさしつかえありません。また平均寿命が延びていますから、還暦や古稀を祝うかどうかは、本人の意向を聞いてから決めるべきです。還暦の場合は、夫婦での旅行をプレゼントするなど、長寿祝い扱いをしないほうがよいでしょう。
 長寿祝いは、本人の社会的な立場や趣味によってかなり違ったものになります。会を開くにしろ、贈り物をするにしろ、本人の気持ちに沿うことが一番です。また本人の話を真剣にゆっくり時間をかけて聞く機会をつくるとか、思い出の土地をいっしょに歩くなど、形式にとらわれないお祝いもあります。

【冠婚葬祭コラム】

■長寿祝い
還暦(61才):本卦還りともよぶ。生まれ年と同じ干支の年を迎えることから「暦に還る」という。
古稀(70才):杜甫の詩『曲江詩』の「人生七十古来稀」に由来。
喜寿(77才):喜の草書体が?であることから。
傘寿(80才):傘の略字が仐で八十に通じる。
米寿(88才):八十八は米の字に通じる。
卒寿(90才):卒の略字の卆は九十に通じる。
白寿(99才):百から一をとると、白=九十九になるため。

●長寿祝いの祝宴

 家族を中心にした内輪の会は、乾杯、プレゼントの贈呈のあと、みんなで楽しく歓談します。設備が整ったホテルや式場などで行います。
 本人の誕生日を基準にします。祖父母のことを書いた作文を孫が朗読するのはうれしいものです。贈り物は手作りのものや、みんなでお金を出し合ってやや高級品を贈るのが喜ばれます。
 会社の役員や教師、団体の主宰者などの長寿祝いの場合は社員や教え子、後輩などが幹事となって、祝賀会の段取りをしますが、本人の意向を重視するのは当然です。会の規模や性格によってはホテルなどで行い、司会者やアトラクションを依頼します。時間は二時間程度とし、プログラムもゆとりをもたせることが大切です。招待状は主催者名で、遅くとも一カ月前には発送します。
 本人主催の場合は引出物を、他の人が主催した場合には記念品を用意します。一般には本人の名前を「○○太郎米寿の祝」などと入れた、風呂敷、ふくさ、陶器などの工芸品、あるいは本人の歌集や長寿祝いの記念出版物を用います。ていねいな場合には、赤飯などの折詰を付けます。
 祝賀会に招待されたら、男性はダークスーツやブラックスーツ、女性は無地の着物か訪問着、スーツやワンピースなど、準礼装が一般的です。会費制の場合は別にお祝いを持参する必要はありません。受付に「御祝」と上書きした金包みを出します。
 決まった祝い品よりも、「これからも若々しく」という気持ちで選びます。本人の趣味にかなう小物や衣料などが喜ばれます。女性ならスカーフやハンカチ、アクセサリー、台所用品など、男性ならやや派手めのネクタイ、マフラー、ゴルフ用品など趣味に合わせたものもよいでしょう。