おとなの祝いごと

●就職祝いの贈り物

 社会人になったお祝いには、自分では手が届かない品物や一人前のおとなにふさわしいものを選びます。
 男性なら仕立て券付きワイシャツ、上品なネクタイ、名刺入れ、財布など、女性ならハンドバッグ、化粧品、時計、アクセサリーなどが適当です。
 品物を贈らずに、高級なホテルやレストランなどに連れていったり、同業者の先輩と会う機会をつくるなどもいいプレゼントです。自分の経験談を話して励ますのも勉強になるでしょう。

●就職の報告とお礼の手紙

 就職が決まったら、お世話になった人にすぐ報告します。とくに仕事の紹介を依頼した人には、そこに就職してもしなくても必ず報告すべきで、時機を逸せずにすませたいものです。
 就職のお祝いをいただいたら、すぐに礼状を出すか、電話でお礼を言います。入社式に母親が付き添うのは論外としても、自宅からの電話となると、母親が最初に出て途中で本人に代わることが多いようですが、社会人として見苦しいことだと自覚してください。自分の力で他人との信頼関係を築けるようでありたいものです。
 就職祝いのお返しは、本来は不要ですが、初めての給料でささやかな手みやげを用意し、報告を兼ねて挨拶にうかがうのが好ましいでしょう。
 なお報告とお礼の手紙は、①時候の挨拶、②就職の報告、③今後の決意、④お祝いのお礼、⑤将来にわたる援助のお願い、⑥末尾の挨拶、がポイントになります。

●昇進・栄転・退職

 夫や子どもの昇進、栄転はうれしいものです。家族がそろってお祝いの会をしますが、他人に対しては吹聴してはいけません。先方から声をかけてきたら「お陰さまで」と答える程度にしましょう。
 他人が昇進、栄転した場合、お祝いは職場の決まりに従って行われます。先方の家族とも、出会ったらお祝いの挨拶をするくらいにしておきます。
 サラリーマンの社会は複雑で、栄転と思ったら本人は左遷と受け取っていたとか、同僚の昇進に不満をもつなど微妙なところがあります。社宅に住んでいる場合など、控えめに行動する場合は餞別を贈ってもいいでしょう。
 定年退職のときは家族から心をこめて、「長い間、ご苦労様でした」という一言を贈りたいものです。家族そろって本人の好物で乾杯し、再出発を祝います。退職の際、送別会をしてもらったり、餞別や記念の品を受け取っていたら、二週間後くらいに礼状を送ります。
 同じ職場の人が定年退職するときは、あたたかな言葉が何よりの贈り物。お世話になったお礼とともに「何かあったら相談に行かせてください」などと挨拶をしましょう。今後の付き合いをお願いすることは、大きな励ましになるものです。二、三週間経ったころの訪問も喜ばれます。

●受賞(章)祝い

 賞(章)を受けるとお祝いの人がさっそくかけつけますから、家人はすぐにしたくをします。式や祝賀会など、本人や家族だけでは対応できませんから、関係者や先輩に援助を仰ぎましょう。
 知人の受賞(章)を知ったら、ただちに電話でお祝いを述べるのがポイントです。メールでもいいでしょう。受賞(章)直後なら酒や鮮魚を持参し、親しい相手なら接待の手助けを申し出ましょう。やや日をおいて受賞(章)を知ったら、グループでお祝いを用意するのが適当です。高価で記念になるものに「祝○○賞受賞」などと刻んで贈ると喜ばれます。さもなければ接待用の菓子などが適当です。現金の場合の上書きは「御祝」「祝○○賞」です。
 なお後日、祝賀会が開かれたらなるべく出席し、お祝いの気持ちを表しましょう。

●新築披露

 家を新築するときには、地鎮祭、上棟式(建て前)を行います。地域で習慣の違いがありますから、一般に棟梁の采配にまかせます。参加するのは建築に直接たずさわる人たちで、現場が遠い場合には家族が出席しないこともあります。
 家が完成し、引っ越しもすんだら新居披露をしますが、日中に行うのがしきたりです。招待は建築でお世話になった人、ごく親しい人、新築祝いをいただいた方に限ります。新居をみていただくのが目的ですし、最近では広々とした家を建てることも少なくなりましたから、大げさにする必要はありません。お祝いの品を飾り、簡略なもてなしをすればいいでしょう。
 新築祝いのお返しは、新築披露の招待で十分です。招かなかったときや目下の人には、半額程度の品を「内祝」として贈ります。品物にはカップやポットなど、物を入れる品を選ぶ伝統もあります。知人、友人には新築転居通知を出します。

●新築祝い

 インテリア用品や家具を贈るのが一般的です。先方の希望を聞くのが好ましいでしょう。
 傘立て、電気スタンド、壁掛け、スリッパ、置き物、クッション、庭木、グリーンインテリアなど。家のようすがわからないときは、商品券、現金、タオルや石鹸などの消耗品が無難です。
 新築披露に招待されていたら、品物は披露の前日までに届けます。上書きは「御祝」とし、紅白また金銀の水引きを蝶結びにします。
 なお新築祝いにはストーブ、灰皿など、火に関係するものは贈らないのがしきたりです。

●開店・開業祝い

 親しい人の開店・開業には、励ましとお祝いの心を表したいものです。お店に顔を出す、取引先を紹介する、経験談の手紙や参考資料を送るなど、品物に頼らないお祝いも大切です。
 お店の雰囲気や事業内容に合わせた品選びをします。一般には、現金、酒、花、置き物、時計、鏡、招き猫や額などの縁起物、開店披露の当日なら、酒や生ものなどを持参しますが、親しい仲なら必要なものを聞いてみましょう。水引きは紅白か金銀の蝶結び、表書きは「御祝」「祝開店(業)」などとします。