仏式法要

●一周忌までの法要

 仏教では、死者がこの世を出てあの世に到るまでの期間を「中有(ちゅうう)」とか「中陰(ちゅういん)」といい、その間は七日ごとに故人を供養する法要を営むことになっています。この七日ごとに、閻魔大王が死者への審判をくだすとされ、四十九日に忌明けとなるわけです。
 七回の法要は、死亡した日を入れて七日目を初七日、十四日目を二七日(ふたなのか)、二十一日目を三七日(みなのか)、二十八日目を四七日(よなのか)、三十五日目を五七日(いつなのか)、四十二日目を六七日(むつなのか)、四十九日目を七七日(しちしちにち)といいます。
 これらの日の中でも、とくに重要とされるのは初七日と七七日です。
 七七日をすぎると、百カ日の法要が行われます。そのほか、毎月の命日(月忌)にも法要を営むのが本来ですが、月忌に僧侶を招いて読経することは少なくなっています。

●初七日

 最初の忌日(きじつ)にあたります。親族や故人の親友、知人などを招き、僧侶に読経してもらい、焼香のあと、精進料理でもてなします。
 しかし、このごろは初七日は葬儀当日に火葬場から帰ったあとに営むことが多くなりました。
 遠方から親族が再び同じ日に集まるということが難しくなったということからです。初七日の法要は、地方や宗派によってはその前夜(逮夜)を重視し、逮夜法要を営むこともあります。

●七七日忌(四十九日)

 この日は初七日同様に僧侶に来てもらい、読経をして、墓参り(埋骨をすることが多い)のあと、会食をするのがしきたりになっています。
 この日は忌明けなので、精進料理でなく、生物を食べてもかまいません。
 地方や宗派によっては、五七日(小練忌)を忌明けとし、盛大に法要を営むこともあります。

【冠婚葬祭コラム】

■位牌と仏壇

 遺骨が正式に墓地に埋葬されると、それまでの白木の位牌は寺院に返し、漆塗りの本位牌にかえて、仏壇に安置することになります。そのためもあって、仏壇は四十九日までにもとめることが多いようです。浄土宗では、法名(戒名)を過去帳や法名軸に記していましたが、最近では位牌を用いることがあるようです。
 仏壇には、金箔仕上げのものや、木地を生かしたものなどがあり、近年ではプラスチックやアルミニウムを使ったものもあります。大きさはさまざまで、台付き型と上置き型に分かれます。部屋が狭い場合は、仏壇の代わりに厨子を使うこともあります。
 仏壇は居間などに安置します。場所は東向きがよいとされることもありますが、いろいろな見解があります。静かで落ち着いた場所がよいでしょう。
 新しくもとめたら、僧侶に読経してもらい、「開眼供養」をします。そして、毎朝、灯明をともして供え物をし、合掌礼拝をします。季節の花は絶やさずに供えましょう。

●年忌法要

 百カ日の法要の後は、年忌法要になります。年回忌の主なもので法要を営むことの多いのは、亡くなった翌年の同月同日(祥月命日(しょうつきめいにち))に行う一周忌から始まり、その翌年つまり満二年目の三回忌、以下七回忌、十三、十七、二十三、二十七、三十三、三十七、五十、百回忌などです。なお、二回忌という数え方はなく、人間の年でいうと、一周忌だけを満で数え、後は数えの年で法要を営みます。
「三十三回忌、五十回忌を最後の年忌法要とすることが多く、問い切りとか弔い上げなどといいます。」
 年回忌の法要は、一周忌までは友人、知人など、広範囲に出席を依頼することがありますが、三回忌以降はしだいに近親者や故人とゆかりの深い人にしぼっていくのが一般的です。
 墓参のあと会食して故人をしのび、参列者には引き出物を用意します。

●盆と彼岸

 盆は別名「盂蘭盆会(うらぼんえ)」ともいい、祖先の霊を供養する行事です。盆行事は、七月十五日を中心に行う地方が多いのですが、関西では一カ月遅れ、あるいは地方によっては旧暦で行います。故人の死後初めて迎える盆は、とくに「新盆(にいぼん)」といい、ていねいに供養します。
 墓参りに行って、墓を掃除し、故人の霊を迎えるための迎え火をたきます。提灯や灯籠を精霊が目印にするといわれ、新盆の家では必ず盆提灯を飾るとされます。
 新盆の家では、僧侶を招いて読経してもらいます。
 春分、秋分の彼岸にも、家庭では仏壇を浄めて僧侶を招き、読経してもらいます。もっとも、このしきたりは、近年ではだいぶ薄れてきました。しかし、花や供物をもって墓参し、墓石と周辺を浄めてから線香を供え、合掌する風習は根強く残っています。
 この日は、昼夜平分(ちゅうやへいぶん)といって、昼と夜の長さが同じになり、この日を境に一日ごとに暖かく、また寒くなります。信仰の厚い人は、夕陽の沈むとき西方に極楽浄土をのぞむことができると伝えられます。

●墓参りの作法

 彼岸の間、仏壇を美しく整え、花、供物を備え、線香、灯明をあげ、お参りします。墓参りもお盆、春秋のお彼岸、故人の命日、正月になど行うのが一般的。それ以外の日にもできるだけお参りするのが望ましいとされます。
 墓参り、あるいは法要など、親戚一同が集まることで、人は一族というつながりを知るのです。社会の最小単位は家族です。それが脈々とつながっているのが先祖です。

【墓参りのやり方】

 墓参りのときに用意するものは、線香、ロウソク、マッチ、お花、果物や菓子・お酒などの供物、水や手桶、雑巾などの掃除用具。
 墓参りにいくときは、墓参りだけを目的とし、できれば先祖に「きょう、墓参りにいきます」ということを事前に告げておくほうがいいでしょう。
 墓前で手を合わせ、先祖に「今時分がここにあること」を感謝し、供養すると同時に、自分自身が仏道に精進するという意義があります。

①供花・供物を供える
 供花や供物を墓前に供えます。
 水鉢に水を満たし、適度の長さに切ったお花を花立てに供えます。
 供物(お菓子・果物)は小皿に供え、墓前の空いている場所に置きます。お参り後は、供物は持ち帰るようにしましょう。

②線香を焚く
 合掌の前に線香を焚きます。
 線香は「香食(こうじき)」と言われ、仏様の食事となります。墓参り用の煙が出やすい線香を焚くようにしましょう。また屋外で線香に火をつけるので、風除けのライターを使用すると便利です。

③墓石に水をかける
 手桶に水をため、柄杓で墓石に直接水をかけます。家族でお参りする場合は、故人にご縁の深い方から順に水をかけます。

④お参り
 家族全員で、合掌、礼拝をし、その後ひとりずつ墓前にしゃがんでお参りをします。仏様に向かい故人の冥福を祈り、日常生活の報告や、感謝の気持ちを伝えます。

【墓石の特徴】

 建立したばかりのお墓は、ピカピカに磨かれて光沢があります。墓石に使われる石は、大理石などに比べても、吸水率が低く、硬度が高くて耐久性にすぐれています。ただ、一年中風雨や直射日光にさらされているわけで、墓石の劣化は避けることができません。

【墓地の清掃】

①敷地を清掃する
 落ち葉を集めたり、雑草を刈ります。植木がある場合は剪定もしましょう。砂利が汚れている場合は、ザルにあげて水洗いをするのもいいでしょう。

②墓石の水洗い
 スポンジに水をふくませ、表面を水洗いします。コケがついている墓石もありますので、取り除きます。頑固な汚れは、石材専用の洗剤をつけて洗います。タワシは墓石を傷つけますので使用は避けたほうが無難です。

③文字彫刻の部分を歯ブラシで磨く
 細かい部分は、歯ブラシなどを利用して掃除しましょう。

④ステンレスの小物類を洗う
 ステンレスの小物類(花筒、線香皿等)は、中に落ち葉などがたまっている場合もあるので、取り出して洗いましょう。

⑤乾いたタオルで水を拭き取る
 最後に乾いたタオルで水を拭き取り、清掃は終了です。

 墓石を自分でお手入れしてみたものの、どうしても専門家に頼らなくてはならない頑固な汚れもあります。

・石に含まれていた鉄分が表面に現れて、金色や茶色に変色してしまったもの。
・水垢汚れが進行して、黒や白い染みがこびりついてしまったもの。
・小さなひび割れ、欠損がおこり、そこに汚れが付着してしまったもの。

 苔が生えたり、頑固な汚れは石材店や墓石クリーニング専門業者に依頼するようにしましょう。

 お供えしたものは必ず持って帰るようにしましょう。そのまま放置しておくと、鳥などの食べかすが墓地に散乱してしまいます。

 墓石にお酒をかける人がいますがこれもNGです。虫や微生物がついたり、染みの原因になります。ビールやジュースの缶を置いている人も見かけますが、缶が錆びて石に付着すると素人では除去できなくなりますので要注意です。墓石に特殊コーティングがされている場合は、コーティングを行った業者に手入れ方法を確認しましょう。

【冠婚葬祭コラム】

■忌日表

初七日
 葬儀後、最初に行われる大事な供養です。遺族・親族をはじめ故人と親しかった人を招き、僧侶に読経してもらい、招いた人たちに焼香してもらいます。一同を茶菓や精進料理で接待します。近年では葬儀当日に還骨勤行とともに略式供養を行ってしまうことが一般的です。

二七日 三七日 四七日 五七日 六七日
 遺族だけの内輪で営まれることが多く僧侶を招いて読経をしますが、省略して行うことも多いようです。五七日は宗派によっては忌明けとすることもあり、初七日と同じように手厚く供養することもあります。

七七日(四十九日)
 この日をもって忌明けとすることが一般的です。親類縁者のほか、故人と親しかった人を招き、大がかりな法要を営みます。
 納骨、埋葬もこの日に行うのが一般的です。位牌も白木から塗り物にかえ「入魂供養」をして仏壇に納めます。遺族はこの日を境に平常の生活に戻り各方面への挨拶、お礼、香典返し、形見分けなどを行います。

百か日
 内輪で営むのが一般的。施餓鬼会(せがきえ)を行うこともあります。

一周忌
 祥月命日(故人の命日)を目安に営みます。親類縁者のほか、故人と親しかった友人、知人などが集まり、僧侶を招いて行います。

三回忌 七回忌 十三回忌 十七回忌 二十三回忌 二十七回忌
 内輪で営むことが多く、卒塔婆(そとば)をあげて故人を供養します。

三十三回忌 五十回忌
 「弔い上げ」といって、三十三回忌、五十回忌が最終回忌になるのが一般的。
 どんな罪を犯した人でも33 年目には極楽往生できるからです。

【冠婚葬祭コラム】

■手元供養

 「手元供養」とは、故人の遺骨や遺灰を手元に置く新しい供養の形のことです。かつては「自宅供養」と呼ばれていましたが、遺骨や遺灰を少量収納できるペンダントやブレスレットなどが製品化され、”常に手元に置いておける”という意味から「手元供養」という言葉が一般化しつつあります。
 手元供養は墓などに代わる新たな供養方法として生まれましたが、いまでは、ペンダント型からミニ骨壺、本尊を入れない仏壇など、多くの手元供養品と呼ばれるものが販売されています。
 手元供養が誕生する以前は、自宅には仏壇があり、故人と関係するものを身につけたいという思いには「形見分け」が行われていました。
ところが、伝統的な仏壇を持つことは、住宅事情や核家族化のため、誰もが簡単にできることではなくなっています。
 また、形見についても、故人を懐かしむ対象としての存在です、日本人は遺骨に対するこだわりが強く、この遺骨を携えたいという最近の要求に応えるには形見では不十分です。さらに、墓が買えない、あるいは遠方にあってお参りできないといった人も増えています。
 これらの状況を過不足なく満たすかたちで、遺骨の一部を入れる容器、あるいは遺骨の加工品として手元供養品が生まれたのです。置く場所も、自宅から持ち運びできる「手元」へと変化しています。
 旧習にとらわれない段階の世代たちが葬送にかかわる年になっており、このことが、従来のやり方に疑問をもつ層を広げているともいえるかもしれません。従来の葬儀やお墓のあり方に疑問を感じ、新しい供養の選択肢を考え提唱を始めています。
 『供養』という言葉は、もともとは宗教用語です。特別な祭祀をイメージされるかもしれませんが、ライフスタイルや時代のニーズに合わせて変化してもいいのではないでしょうか。