遺族・近親者が決めておくこと

●だれが喪主になるか

 喪主は葬儀の代表者であり、故人になりかわって参列者の弔問を受けるわけですから、通夜に入る前に決定しておかなければいけません。
 以前は法律上の相続人「嗣子(しし)」がなることが多かったのですが、このごろは配偶者がつとめるのが一般的です。原則として血縁の濃い順に選びます。配偶者が死亡しているときは、長男、次男の順で、男子がいない場合は嫁いでいても長女、次女の順番でかまいません。子がいないときは、父親、母親、兄弟の順になります。もっとも故人が生前に喪主を指定していた場合は、その希望に沿うのが一番ですし、喪主があまりに高齢だったり幼児の場合は弔問客に対して礼を欠くこともありますから避けるべきでしょう。喪主は葬儀に続く一連の仏事を主催することにもなります。

●宗教形式を決める

 仏式か、キリスト教式か神式かなど、葬儀の形式をできるだけ早く決めなければなりません。宗教形式は故人の意向に従うのが大原則といえます。家族が仏教徒で、故人がキリスト教信者だったある例では、はじめに仏式で行い、改めてキリスト教式でといった方法をとりましたが、やはりおかしなものです。
 仏式で近年よく問題になるのは、初めて葬儀を出す家の場合、宗旨がわからずあわてるケースです。古くからの宗旨が親から子へ、子から孫へと伝えられる機会が少なくなってきたからでしょう。こうした場合は、郷里へたずねたり本家筋に聞いて確認をとっておくことが必要です。それを怠り、他宗派で戒名をつけてしまったりすると、菩提寺で埋葬してくれない、といったことになりかねません。
 日本の葬儀は全体のおよそ八~九割が仏式といわれていますが、諸宗派によりしきたりの違いはかなり煩雑ですから、宗旨の確認だけはしっかりしておきましょう。
 一方、宗教離れが進む中で、「無宗教葬」の比率が増加しつつあるのも近年の傾向です。とくに遺言もなく、信仰もなくて形式を決めにくいときは、故人の生前の考え方を思い出し、遺族や近親者が話し合って決めるようにします。

●規模と費用を決める

 葬儀の規模は、予算とのかねあいもありますが、故人の生前の意志を尊重し、加えて社会的地位、知名度、交際範囲などを考え合わせて決めます。
 以前は、盛大であればあるほど仏となった故人が極楽往生できるとされ、たとえ借金してでも世間に笑われないような葬儀を、と考えがちでした。しかし、最近では簡略化されつつあります。

●葬儀の日程を決める

 日取りや時間は、死亡通知が届く時間や遠方からの参列者の到着時間、僧侶や火葬場の都合などを考え合わせて決定します。また法律で、火葬・埋葬は死亡後二十四時間以上を経過しないと認められないと定められています。
 現在は、死亡日の翌日通夜、二日目に葬儀・告別式というのがふつうですが、死亡時間が朝で準備ができる場合は、当日通夜、翌日葬儀・告別式というケースもあります。
 また「友引」の日の葬儀は「死者が親しい人を引き寄せる」といって、この日は葬儀をしないことが多くなります。これはまったくの迷信から出た風習ですが、現実に火葬場も休みのことが多いので、実際に日取りを決めるときは避けることになるでしょう。

●式場を決める

 斎場で行うのが一般的です。団地やマンションなどの高層住宅では、エレベーターや階段、廊下などは共有部分で近隣の迷惑になることが多く、葬儀のスペースが確保できにくいのが現実です。このような場合は、団地内の集会所や公民館を借りるとよいでしょう。どうしても自宅で行うしかない場合は、隣家に頼んで家具を預かってもらうようにし、スペースを確保します。また、葬儀社では団地サイズの祭壇も用意してくれますから、手配してもらうとよいでしょう。
 寺院を借りる場合は、檀家であれば菩提寺を借りることになりますが、遠方だったり小さくて不向きの場合は、僧侶に相談して同宗同派の寺院を紹介してもらうようにします。勝手に他の寺に依頼すると、埋葬のときなどにトラブルの元になります。
 斎場を借りるときは、葬儀社が手配してくれますが、できれば出向いて、前もって下見をしておくとよいでしょう。また、遠方から泊まりがけで来てくれる親族のために、喪家が手狭なときはホテルなどの宿泊の手配もしなくてはなりません。費用は原則として喪家側が負担します。

●社寺・教会への依頼

 日ごろから信仰している宗教の寺院や神社・教会などが決まっていれば、すぐに連絡して通夜、葬儀・告別式の予定を伝え、打ち合わせます。
 依頼には直接出向くのがていねいで、喪主かその代理人ともう一人が連れ立って行ったほうがよいでしょう。最近は最初の依頼は電話で済ませることが多くなっています。
 相談内容は、葬儀の日取りや時間・場所、読経してもらう僧侶の人数、戒名の依頼などで、そのほか葬儀を寺で行いたい場合や火葬場についていってもらうかどうかなども打ち合わせます。
 神社へ依頼に出向く場合は、喪主や喪家の人間が行ってはいけません。代理の人を立てますが、これは、神道では死をけがれとして忌むためです。死者の出た家の者は、忌みの期間が終わるまで神社に入れません。

●遺族の服装の心得

 通夜前の喪主、遺族はふだん着で地味なものを着用します。喪服を着る必要はありません。しかし、死去を伝え聞いた近所の人々や故人の友人・知己がかけつけてきますから、清潔を心がけます。男性はひげを剃り、髪を整える、女性は薄化粧にして、結婚指輪以外の指輪類やアクセサリーをとるなどの心がけは常識です。マニキュアも派手な色はいけません。
 通夜、葬儀、告別式の服装は、原則として喪主、遺族は正式喪服を着用していましたが、近ごろは略式喪服を使うことが多いようです。近親者は略式喪服でかまいません。
 できるだけ早く服装を点検し、アイロンをかけたり、半えりをつけたりしておきます。喪服がない場合は、葬儀社に相談すると貸衣裳を手配してくれます。

【冠婚葬祭コラム】

■社葬・団体葬を出すとき
 故人の社会的地位が高い場合、たとえば会社の社長であった場合や、勤務中の事故で殉職した場合などは、社葬・団体葬(公葬)の申し出があることがあります。社葬や団体葬は、会社なり団体なりが主催者、遺族が喪主、葬儀委員長に会社や団体の重職についている人がなるのが一般的です。
 葬儀内容は個人葬と大差ありませんが、性格上盛大に行われるので、運営はかなり煩雑になります。遺族の意向が反映されにくくなるので、事前の打ち合わせを慎重にしておきましょう。