戒名と位牌

●戒名とは何か

 戒名(かいみょう)は、枕づとめから納棺までの間に付けてもらうのが一般的です。戒名は、今でこそ死者に付ける名前のように思われていますが、本来は仏弟子になったあかしとして付けられる仏名のことで、仏教徒なら生前に付けるのが当たり前です。戒名の“戒”は、仏弟子として守るべき戒律を意味しています。
 また、「戒名」は一般的な呼び方で、浄土真宗では「法名」、日蓮宗では「法号」と呼んでいます。

●戒名の種類

 戒名、法号、法名には位階があり、名付け方、格付けが複雑に分けられて定められています。
 宗派によっても違いますが、戒名の付け方は、故人が生前、仏教徒として、どれだけ社会に貢献したか、成人か子どもか、男性・女性の別などで変わってきます。
 また「三選三除」といって、声を出してひびきのよいことば、故人の年齢に合う漢字などを選び、難字や意味不明の字を避けるなどの基準もあります。生前の人柄なども重視しますから、僧侶には故人の思い出を語って参考にしてもらいます。
 戒名の主なものをあげます。
院殿号 ○○院殿○○○○大居士(女性は大姉)
院号 ○○院○○○○居士(大姉)
信士 ○○○○信士(信女) もっとも多く用いられる戒名。
童子 ○○○○童子(童女) 子どもの戒名。
孩子(孩女)(がいじ) 幼児に付けられる戒名。

 名の付け方は、宗派によっても違い、浄土宗では名の上に、「釈」を付けます。また、日蓮宗では「日」の字や「妙法蓮華」の一字が引用されたりします。

●戒名の謝礼

 戒名の格によって、また宗派や寺によっても戒名に対する謝礼が違います。しかし本来、戒名の謝礼は「これだけ」と決められたものではなく、「お布施」として渡すものです。お金で買えるものではありません。
 熱心な仏教徒でもなく、その寺院とふだんから付き合いもないのに、むやみに格の高い戒名を付けてもらうのは本末転倒です。僧侶に率直に相談してみるのが一番です。
 故人が生前から戒名を付けたくないといった場合は、葬儀は無宗教葬ということになります。
 仏教では、仏弟子のあかしとして戒名が必要だからです。また、うっかり宗派の違う戒名を付けると、菩提寺に埋葬のときや分骨のとき、拒否されることもあります。そのようなときは、急いで戒名を付けないで、とりあえず俗名で葬儀を行い、その後戒名を付けてもらうこともできます。

●位牌

 位牌は故人の霊の位や姓名を記すもので「牌」は本籍の「籍」と同じ意味。表に戒名、裏に俗名、没年月日、年齢などが書かれています。葬儀社が用意したものに僧侶が書いてくれます。
 納骨までの位牌は白木のもの(仮位牌)で、遺骨、遺影とともに祭壇に飾っておき、納骨のときに寺に納めます。その後、仏壇に安置する朱塗り、金箔塗り、黒塗りなどの本位牌に変えます。
 本位牌には、戒名を記した薄板が何枚も納められる「繰り出し位牌」も用いられます。これは、先祖代々の霊を祀るものです。
 なお、浄土真宗では位牌を用いず、過去帳を安置するか、法名を記した掛け軸をつるします。