通夜のしきたり

●祭壇を飾る

 自宅葬では、通夜の前に葬儀社が、葬儀用の祭壇を飾ります。
 祭壇には、白木の位牌、遺影、ロウソク、供花などが飾られ、背後に棺が置かれます。飾りは、宗派によって若干違いますが、葬儀社がそれに応じて飾りつけてくれます。
 祭壇には、宗派によっては、故人愛用の碗で一膳飯と水を供えます。また、故人の愛用品や色紙、勲章、優勝カップなどを添えることもあります。香典の包み、生花や果物などの供物類も飾ります。祭壇の前には座布団を敷きます。ここに僧侶が座って読経することになります。

●通夜の席次

 通夜は正式な儀式ではありませんから、定まった席次というものもありません。一般的には、祭壇に向かって右側奥から、喪主、遺族、近親者というように血縁の近い順に座り、左側は親しい友人、知人、会社関係者の順です。一般弔問客は、正面の席に先着順に並びます。
 しかし、会場が狭いときは、血縁の濃い順に棺に近い場所を選び、一般客はその周辺に座るようにしてもかまいません。
 席には世話役が案内するようにします。喪主、遺族はみずから立って迎えることはしません。

●通夜の進行

 通夜はおおよそ次の手順で進められます。
①僧侶の到着
 僧侶が着いたら、祭壇や供物の供え方を点検してもらい、着替えのために控え室に案内します。喪主や遺族が挨拶にうかがい、茶菓などでもてなすと同時に、読経の時間などを打ち合わせておきます。
②一同着席
 僧侶が控え室で待機している間に、通夜に参列する人たちは席についておきます。
③僧侶入場
④読経
 通夜は読経が中心です。ふつう三十分から四十分かかります。とくに弔問客が多く、次の式次第である焼香に時間がかかりそうなときは、読経の間に焼香を済ませることもあります。ときによっては、読経後に僧侶から法話があります。
⑤焼香
 読経後、僧侶が焼香し、それに続いて喪主、近親者、一般参列者の順に焼香します。一般的には通夜の席で焼香が用いられます。通夜の式場が狭いときや弔問客が多いときは、焼香の香炉を各自の手元に順に回す「回し香」にすることがあります。
⑥喪主の挨拶
 焼香がひととおり終わると、僧侶は「これにて通夜の法要を終わります」と挨拶をして、退場します。その後、喪主か親族代表から弔問客への挨拶があります。
 参列者へ礼を述べ、続いて故人に対する生前の厚誼への感謝を述べます。
 その後、通夜ぶるまいの席へ誘います。
 いずれにしても、挨拶は簡単でよく、会場が狭いときには焼香を終わった順に通夜ぶるまいの席についてもらい、後で喪主から挨拶をすることもあります。

●焼香の作法

 焼香は釈迦の時代から二千五百年もの間続けられてきました。焼香には、沈香(じんこう)や抹香(まっこう)によるものと線香によるものがあります。仏事では、通夜や法事では線香を、葬儀や告別式では抹香を使うのが一般的です。考え方としては、抹香は儀式用、線香は日常用といえます。
 焼香のしかたには、座ったままのやり方と立ってするやり方もありますが、斎場などでは、立って行うことが多くなっています。手順はいずれも同じで、座ったままでやる場合には、正座の姿勢のまま、にじりよって進んだり退いたりする点が違います。
 焼香の順序は、まず自分の順がきたら、次の客に軽く会釈して前へ進み、遺族と僧侶に一礼します。焼香台の三歩ぐらい手前で遺影に一礼。焼香台の前に進んで合掌し、抹香を右手の親指、人差し指、中指で少量つまみ、香炉に入れます。その際抹香を目の高さまでおしいただくこともあります。
 回数や作法は宗派によって違いますが、一般的には一度から三度までの間でかまいません。会葬者が多く、焼香に時間がかかりそうなときは、一度でもよいのです。
 終わったら再び合掌し、そのままの姿勢で二、三歩分ほどさがり、向きを変え、遺族に目礼して自分の席へ戻ります。
 線香の焼香では、一度に立てず一本ずつ立てること、炎が出たら手であおいで消し、吹き消してはならないことに気をつけます。
 宗派によって、本数や線香を立てるか横にするかなどの違いがありますが、厳密な決まりはありません。

●通夜ぶるまい

 着替えてもらった僧侶、残った弔問客を軽い食事と酒でもてなす席です。一般弔問客は、通夜の焼香を終えると帰ることが多く、喪主、遺族も無理にひきとめません。
 通夜ぶるまいの料理は、昔は精進料理だけということもありましたが、このごろはあまりこだわらず、寿司やサンドイッチなどの出前物や、仕出し料理の刺身などを利用するのが一般的です。
 地方によってはかなりにぎやかに行う習慣もあり、そのほうが故人の供養になるといわれます。沈みきった雰囲気だけというよりは、そのほうが故人も喜ぶかもしれません。
 酒食がひととおりいきわたった頃合いをみはからって、喪主か遺族から、お開きの挨拶をします。これを潮に、弔問客は帰ります。この挨拶は、参列の礼を述べたあと「夜も遅くなりましたので、このへんでお開きにしたいと存じます」程度の簡単なものでよいでしょう。弔問客が帰るときにも、喪主や遺族は着座のままでよく、会釈をかわす程度で、見送りには立ちません。