火葬場のしきたり

●火葬場へ持っていくもの

 まず忘れてはならないのが、「火葬許可証」です。これがないと火葬場では受け付けてくれません。火葬が終わると火葬場では、日付を記入してくれます。これが埋葬許可証になりますから、紛失しないよう保管しなければなりません。
 また火葬場では読経と焼香をしますから、そのために位牌や遺影などを持っていきます。
 火葬には一時間以上はかかりますから、その間、参列者は控え室で待つことになります。この間の接待用に、菓子やつまみ、飲み物なども必要です。火葬場によっては、売店や喫茶室が完備されており、その場合は間に合いますが、地方の火葬場では茶だけの準備しかできないところもあります。

●納めの式

 係員の指示にしたがって、棺をかまどの前に安置します。
 小机が置かれたら、その上に位牌と遺影を飾ります。香炉、生花、供物、牌台などを配置します。これは火葬場のほうで用意してあるのが一般的です。
 この祭壇の前で、「納め式」を行います。僧侶が読経し、その中を一同が順に焼香します。読経は五分から十分ほどが一般的です。
 しかし、このごろでは僧侶が火葬場までついていかないことも多く、読経は略されることが多くなっています。この場合は、喪主から順に焼香、礼拝して納めの式を終わります。

●骨あげの作法

 かまどに点火されてから骨あげまでは、およそ一時間から一時間半かかります。その間、喪主以下の参列者は控え室で待ちます。
 控え室では、僧侶に上座に座ってもらい、喪主がその横に座ってもてなします。参列者には、茶や菓子、酒と軽いつまみなどでもてなします。
 火葬が済むと係員から連絡がありますから、骨あげをします。
 骨あげは、竹箸か、竹と木を一本ずつ組み合わせた箸で行うのがふつうで、二人一組で一つの骨を拾い、二、三片を拾って次の組と交代します。骨は、足、腕、腰、肋骨、頭骨といったぐあいに、下半身から上半身へと拾い上げて骨壷に入れます。ただし、舎利(しゃり)と呼ばれるのど仏の骨は、最後にもっとも血縁の深い二人が一組で拾うこともあります。
 こうして骨がすべて骨壷におさまると、足が下で、頭骨が上、生きているときと同じようになるわけです。
 骨あげが終わると、係員が骨壷を白木の箱に納め、白い布で包んでくれますから、喪主はそれを胸にかかえて持ち、帰途につきます。埋葬許可証は、遺骨の箱の中に入れておくと紛失しないで済むでしょう。
 以前は、帰路につく前に「灰送(はいそう)」といって、遺骨をいったん安置し、読経したものですが、今日ではほとんど行われません。

【冠婚葬祭コラム】

■野辺送り

 交通事情が変わり、火葬場へは車で行きますが、昔は故人と親しかった人たが棺をかつぎ、葬列をつくって墓地まで歩いていたものです。これが「野辺の送り」です。墓地のあるところが、野原のような場所だったから野辺送りというようになったようです。
 出棺のとき、故人が常用していた茶碗を割ったり、松明(たいまつ)をかかげていくなど、さまざまなしきたりがありましたが、それらはみな死者が安全に葬られるようにという願いのあらわれでした。