出棺までのしきたり

●最後の対面

 告別式が終わると、その日のうちに火葬します。そのため、棺を火葬場へ移しますが、霊柩車に乗せるまでの間、遺族や、親しい友人たちは故人と最後の対面をし、分かれを惜しみます。
 棺の前に、喪主、遺族、近親者と血縁の深い順に並び、特別親しかった痴人、友人がこれに続きます。このとき、供えられていた花を、めいめいが一輪ずつ、棺の中の遺体のまわりを埋めるように敷き詰めます。これを「別れ花」といいます。また、故人が愛用していた小物類をいっしょに入れることもあります。

●くぎ打ちの儀式

 近年は省略されることが多くなりましたが、最後の対面が済んだら、棺のふたを閉め、くぎ打ちの儀式に移ります。くぎ打ちの順番は、喪主から始め、遺族、近親者と、故人のゆかりの深い順に小石で一人二回ずつ、コツコツと軽く打ちます。
 この小石は、三途の川の河原の石を意味するとか、霊をしずめるためといわれています。小石は葬儀社が用意してくれます。
 棺のふたはあらかじめ、くぎがゆるく打ってあります。遺族は軽く打つだけでよく、あとで葬儀社が完全に打ちつけてくれます。

●出棺

 くぎ打ちが終わると、出棺です。棺は遺体の足元に先に向けて、遺族や血縁の若い男性が運び出し、霊柩車に乗せます。
 喪主は棺の前に位牌を胸に持って立ち、次の人が遺影を持って続きます。
 霊枢車に棺が安置されると、遺族は出棺を見送ってくれる人たちに向かって整列し、喪主か親族代表から会葬者に対する挨拶をします。葬儀社の責任者が代行することもあります。
 挨拶の内容は、故人への生前の厚誼に対する礼と、参列への謝意が中心です。たとえば、
「本日はご多忙中にもかかわらず、故◯◯◯◯の葬儀にご会葬いただきまして、ありがとうございます。皆さまにこうしてお見送りいただき、故人もさぞかし喜んでいることと存じます」
というような内容になります。余裕があればこれに付け加え、
「故人は日ごろから健康なことを自慢にしていたぐらいですから、このように突然倒れるとは思いもよりませんでした。しかし◯◯歳という年齢を考えますと、いわば天寿をまっとうしたのではないかとも思っております。
家業のほうは、長男の◯◯が引き継ぎまして、やっていく覚悟ではありますが、まだ何分にも若輩でございます。どうぞ皆さまのご指導ご鞭撞のほどお願いいたします」
と述べ、再び参列への謝意を表明して挨拶を終えます。
 挨拶が述べられている聞に、遺族は位牌、遺影などを会葬者に向けて立ち、挨拶が終わったら一札します。

●火葬場ヘ向かう

 火葬場へは霊枢車を先頭に、遺族と同行者は何台かの車に分乗して後に続きます。
 霊枢車には、棺のほかには、運転手、葬儀社の係員、喪主や遺族が乗ります。
 お供車には、ゆかりの深い順に分乗して続きます。

●男性の喪服

 正式な喪装は、和装なら紋服、洋装ならモーニングコートとなりますが、現在ではブラックスーツを着用することが一般的です。白いワイシャツに黒いネクタイが原則です。ただ、通夜の場合は急きょ駆け付けることもあるので、仕事着に黒い腕章をつけて出席してもかまいません。

●女性の喪服

 正式なものは和装なら、黒無地の羽重、また縮緬で、五つ紋付き、洋装なら黒のアフタヌーンドレスになります。現在では、略式で黒のスーツでかまいません。パンツルックも増えています。アクセサリーは真珠の短い一連ものと結婚指輪にとどめましょう。

【冠婚葬祭コラム】

■数珠

 数珠は仏事には欠かすことのできない法具で、「念珠」ともいいます。数珠の数は百八で人間の煩悩の数と同じです。五十四や二十七個を一輪にしたものを用います。この数にはそれぞれいわれがあります。
 数珠の使い方は宗派によって異なりますが、合掌の際、房が真下に下がるように両手の四本の指にかけ、親指で軽くおさえます。短いものは左手にかけ、両手ではさみこむようにします。
 数珠は、通夜、葬儀、告別式など仏事の際に持参しますが、仏教徒でなければ必ずしも用意しなくてもかまいません。